お父さんの口癖

「結婚式には出ないからな」

 

さいころからのお父さんの口癖だった。

 

本当に結婚式には出なかった。

私が家出をしたからだ。

 

本当に本当に後悔している。

 

なんで意地を張ったんだろう。

なんで勝手なことをしたんだろう。

なんで。なんで。

 

 

和解した後、「結婚式の写真を見せて。」と言ってくれたからお母さんに見せた。

「興味ない。」って言ってたけど、きっとあの後、お父さんも見たんだろうな。

 

 

ウエディングドレス姿、見せてあげられなくてごめんなさい。

 

 

お父さんは頑固だけど、本当は誰よりも私のことを好きでいて可愛がってくれていたことを知ってる。

 

いつも可愛い可愛いって言ってくれてたお母さん。

どうしても女の子が欲しくて、私をやっと授かってすごく嬉しかったんだってことも知ってる。

 

 

すごく大事にしてもらった一人娘だったのに、勝手なことをしてごめんなさい。

 

 

もう叶うことはないけど、時々ふと、みんながいる結婚式を想像しては後悔している。

お母さんのご飯

実家にいた時に食べたお母さんのご飯。

 

お母さんが作るご飯はいつも量が多かった。

お腹がパンパンに膨れるくらい沢山だった。

 

私以外の家族は食べるのが速くて、いつも私だけが最後まで食べていた。

お母さんが洗い物を終えてもまだ食べていた。

 

「量もう少し減らしてよ。」

 

と言っても量はあまり変わらなかった。

 

 

家庭を持った今になって、あの頃のお母さんの凄さが分かった。

2人分でさえ私は用意するのが大変なのに、家族全員分、毎日用意していたお母さんは凄かった。

 

「料理は得意じゃない」と言いながら、毎日美味しいご飯を用意してくれるお母さんは凄かった。

 

どれだけ大変だったんだろう。

もっと感謝して食べればよかった。

 

たまにじゃなくて、もっと家事を手伝ってあげればよかった。

たまに作る慣れない私の手料理を、美味しそうに食べてくれたお母さんが忘れられない。

 

 

 今はそんなに量は食べられないけれど。

また実家に帰ってお母さんのご飯を食べたいな。

 

 

私はいじめっこ

接客業をやっていた時に、中学の頃の同級生の母親がお客さんとして来店した。

 

流れは割愛するけど、初めは気が付かなくて、私は後から同級生の母親だということに気がついた。

 

その同級生はいじめられていた。

無視されたり、悪口を言われていたような気がする。

 

「ような気がする」と言っているように、私は全くと言っていいほどその子と関りが無かった。

クラスは一緒になったことが無かったし、1.2回他愛もない話をしたような気がするくらいだった。

 

いじめられていたことは知っていたけど、私は何もしなかった。

 

 

数日経って、その子の母親がまた来店した。

前にこにこしていたお客さんは、窓口越しに私に向かってどなり散らした。

 

「あんた私の娘をいじめてたんだろ!!」

「私の娘は高校も中退したのに、あんたはこんないいところに勤めて!」

「よく平気でいられるね」

 

頭の中が真っ白になった。

 

本当にいじめていた記憶はない。

 

でもいじめた側は覚えていなくても、いじめられた側は覚えているっていうし。

私は何かしてしまっていたのだろうか。

 

見て見ぬふりしていたのもいじめだったのか。

 

そんなことをグルグル考えながら、何も言い返せずただ聞いていた。

 

一つだけ。

一つだけ許せなかったのが。

 

「私の両親を馬鹿にされたこと」

 

でももっと許せなかったのは、それに対して「言い返せなかったこと」。

 

社会人としては言い返さないのが正解かもしれないけど、本当は悔しくて悔しくてしょうがなかった。

 

 

家に帰ってから、そのことは両親には言えなかった。

 

 

結局、上司が詳しい話を聞いてくれたけど、「いじめてきた人」や「いじめられた時の話」で挙げられた名前に私の名前はなく、聞いた名前は「やんちゃをしてた目立つグループの男の子たち」だった。

 

後日窓口で騒いだお詫びとして、母親はシュークリームを持ってきたけど、私は食べなかった。

 

 

「変わった人だったね」と言いながら食べる先輩も。

「シュークリーム」を持ってくる母親も。

後日、平然と窓口に来るところも。

そんな母親に「社会人として」作り笑顔で対応する私も。

 

どれもこれも気持ち悪くてしょうがなかった。

 

「あの時の気持ち悪さ」と「私はいじめていたんだ」という気持ちだけが、今でもずっと残っている。

 

 

親不孝な娘②

コロナ禍で両親に会えない今、よく考えることがある。

 

「もしも両親に何かあったらどうしよう。」

 

交通事故に会ったら?

病気になったら?

 

なにも親孝行も出来ていないのに。

両親を困らせて傷つけてしかいないのに。

 

かと言って、会っても素直に「ごめんなさい」も「大好き」も「ここまで育ててくれてありがとう」も伝えられない。

 

そんなことをしてたらいつか終わりがきてしまう。

私に何かあるかもしれないし、両親の寿命がきてしまうかもしれない。

 

そんなことを思いながら一日一日が過ぎていく。

 

お父さんとお母さんに会いたいな。

 

 

親不孝な娘

結婚して家庭を持って初めて感じていること。

 

「私はなんて親不孝なんだろう」

 

大好きで大嫌いであった両親。

私は子供の頃たくさん最低なことをして、傷つけるようなことをしてしまった。

 

私が悪いことをするたびに、どんどん厳しくなる家庭が嫌でしょうがなかった。

早く家を出たくてしょうがなかった。

 

厳しい決まりごとが嫌で、何度も何度も嘘を重ねた。

バレるたびに怒られて、また厳しくなって、また嘘をついた。

 

あの頃に戻ったらきっとまた同じことをしてしまうけど、今はすごく思う。

 

「なんであんなことをしてしまったんだろう」

 

 

親に向かって「死のうと思った」って言ったこと。

縁を切って家を出てきてしまったこと。

 

 

他にも後悔していることは沢山あるけど、この2つは特に「してはいけなかった」。

 

両親の気持ちを考えるだけで涙が止まらない。

でも今の私以上に、きっと見えないところで両親は辛い思いをしていたに違いない。

 

今は和解して話せるようになったけど、あの時の事実は消えないし。

本当に許してもらえてるのかも分からない。

もう昔のようには戻れないんだろうなって。

 

ただ、昔のことを思い出しては後悔している。

誰にも言えないけれど、両親に謝ることもできないけれど。

心の中で「ごめんなさい」を繰り返している。

 

 

私みたいな娘を産んで後悔していないかな。

後悔していないといいな。

ごめんなさい。も言えないようなダメな娘でごめんね。