私はいじめっこ
接客業をやっていた時に、中学の頃の同級生の母親がお客さんとして来店した。
流れは割愛するけど、初めは気が付かなくて、私は後から同級生の母親だということに気がついた。
その同級生はいじめられていた。
無視されたり、悪口を言われていたような気がする。
「ような気がする」と言っているように、私は全くと言っていいほどその子と関りが無かった。
クラスは一緒になったことが無かったし、1.2回他愛もない話をしたような気がするくらいだった。
いじめられていたことは知っていたけど、私は何もしなかった。
数日経って、その子の母親がまた来店した。
前にこにこしていたお客さんは、窓口越しに私に向かってどなり散らした。
「あんた私の娘をいじめてたんだろ!!」
「私の娘は高校も中退したのに、あんたはこんないいところに勤めて!」
「よく平気でいられるね」
頭の中が真っ白になった。
本当にいじめていた記憶はない。
でもいじめた側は覚えていなくても、いじめられた側は覚えているっていうし。
私は何かしてしまっていたのだろうか。
見て見ぬふりしていたのもいじめだったのか。
そんなことをグルグル考えながら、何も言い返せずただ聞いていた。
一つだけ。
一つだけ許せなかったのが。
「私の両親を馬鹿にされたこと」
でももっと許せなかったのは、それに対して「言い返せなかったこと」。
社会人としては言い返さないのが正解かもしれないけど、本当は悔しくて悔しくてしょうがなかった。
家に帰ってから、そのことは両親には言えなかった。
結局、上司が詳しい話を聞いてくれたけど、「いじめてきた人」や「いじめられた時の話」で挙げられた名前に私の名前はなく、聞いた名前は「やんちゃをしてた目立つグループの男の子たち」だった。
後日窓口で騒いだお詫びとして、母親はシュークリームを持ってきたけど、私は食べなかった。
「変わった人だったね」と言いながら食べる先輩も。
「シュークリーム」を持ってくる母親も。
後日、平然と窓口に来るところも。
そんな母親に「社会人として」作り笑顔で対応する私も。
どれもこれも気持ち悪くてしょうがなかった。
「あの時の気持ち悪さ」と「私はいじめていたんだ」という気持ちだけが、今でもずっと残っている。